実家へ帰ったとき、玄関に靴が増えていたり、廊下に紙袋が置かれていたりすると、少し気になることがあります。
台所のコンロまわりには物が増え、古い暖房器具がそのまま使われている。郵便受けにはチラシや手紙がたまっている。こうした変化を見ると、「親の家は大丈夫だろうか」と不安になる方もいるでしょう。
けれど、最初から家全体を片づける必要はありません。親の家を見るときは、物の多さより先に、転倒、火災、防犯に関わる危険箇所を確認します。
安全確認は、親の暮らしを否定するために行うものではありません。親が今までの生活を続けやすいように、危険になりそうな場所を見つけ、小さく整えるために行います。
この記事では、親の家の危険箇所を「転倒・火災・防犯」の3つに分けて紹介します。チェックがついた場所を、その日にすべて直す必要はありません。まずは、今の状態を知るところから始めましょう。
- 親の家で片づけより安全確認を優先する理由
- 玄関、廊下、階段、浴室の転倒チェック
- 台所、暖房器具、コード類の火災チェック
- 玄関、窓、電話、郵便物の防犯チェック
- 家族で危険箇所を共有する方法
親の家は物の多さより危険箇所から見る

親の家が気になり始めたら、物が多い部屋からではなく、親が毎日使う場所から確認します。
押し入れや納戸に物が多くても、今の暮らしへ直接影響していないことがあります。一方で、玄関の靴、廊下の紙袋、コンロの近くにある物は、毎日の動きや安全に関わります。
家全体を見て気持ちが重くなるときは、「今日は転びやすい場所だけ」「次は火の元だけ」というように、目的を一つに絞ると確認しやすくなります。
見た目より親が無理なく動けるかを見る
親の家の安全確認では、部屋が整って見えるかではなく、親が無理なく歩き、物を使えているかを見ます。
床に物が少なくても、照明が暗かったり、マットが滑りやすかったりすれば、転倒につながることがあります。反対に、棚の上に物が多くても、通路や火の元に影響していなければ、すぐに片づけなくてもよい場合があります。
まずは、次のような視点で実家を歩いてみましょう。
- 親が毎日通る場所か
- 夜間にも使う場所か
- 段差や滑りやすい床がないか
- 火や暖房器具の近くに物がないか
- 玄関や窓の鍵を無理なく扱えるか
- 親が物をよけながら歩いていないか
僕は機械設備の仕事でも、作業を始める前に、人が通る場所と危険になる物を確認してきました。見た目が整っていても、人の動線に危険があれば安心して作業はできません。
親の家でも同じです。収納の中より先に、親の動きと足元を見るようにしています。
気になる場所があっても、親の持ち物をすぐに処分しないようにします。まずは移動できるかを相談し、必要な物なら取りやすく安全な場所を一緒に考えましょう。
見た事実を家族で共有する
危険箇所をチェックリストで確認すると、兄弟や家族にも状況を伝えやすくなります。
「実家が散らかっている」と伝えるだけでは、家を見ていない人には、どこが危険なのか、どの程度急ぐ必要があるのかわかりません。
「寝室からトイレまでの廊下に箱がある」「コンロの横に紙袋が置かれている」と具体的に伝えると、何を優先するかを話し合いやすくなります。
家族へ共有するときは、親を評価する言葉ではなく、確認できた事実を伝えます。
- 確認した場所
- 気になった物や設備
- 親が困っていると話したこと
- 家族で対応できそうなこと
- 専門職へ相談したいこと
真美「危ないところが多い」だけだと、見ていない人には伝わりにくいよね。
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そうだね。廊下に箱があるとか、コンロの近くに紙があるとか、見た事実を伝えたほうが相談しやすいね。
写真を共有する場合は、親へひと言伝えてから撮りましょう。「転びそうな場所を兄弟にも相談したいから、廊下だけ撮ってもいい?」と確認すれば、親の気持ちを置き去りにせずに済みます。
危険箇所チェックリストは、親の家を採点するものではありません。今の暮らしで困りやすい場所を見つけ、家族で小さく整える順番を考えるために使います。
転倒につながる場所を確認する


転倒の確認では、親が毎日歩く場所を優先します。特に玄関、廊下、階段、浴室は、段差、滑りやすさ、体の向きを変える動作がある場所です。
自分の歩幅では気づきにくいため、親と同じくらいの速さで歩いてみると、足元の不安が見えやすくなります。
玄関
玄関では、靴や荷物と段差の位置を確認します。買い物袋を持って帰ったときは片手がふさがり、普段より足元が見えにくくなることがあります。
- 段差の近くに靴や荷物が置かれていないか
- 普段履く靴を取り出しやすいか
- 傘や杖が倒れやすくなっていないか
- 玄関マットがずれたり、めくれたりしていないか
- 夕方や夜でも足元が見えやすいか
- 靴を履くときにつかまれる場所があるか
靴が多くても、いきなり処分する必要はありません。普段よく履く靴を一足か二足だけ取りやすくし、季節外の靴を靴箱や保留場所へ移すだけでも、足元に余白ができます。
親が片足で立つことを不安そうにしている場合は、安定した椅子や手を添えられる場所についても考えます。ただし、通路を狭くする椅子ではかえって危険になるため、玄関の広さも確認しましょう。
廊下
廊下は、玄関、居間、寝室、トイレなどをつなぐ通り道です。壁際に寄せた小さな箱や紙袋でも、親がふらついたときには動きを妨げることがあります。
- 床に新聞、衣類、紙袋などがないか
- 電源コードが通路を横切っていないか
- 物や家具で通路が狭くなっていないか
- 親が壁や家具につかまりながら歩いていないか
- 寝室からトイレまでの照明が十分か
- 床材の切り替わりに小さな段差がないか
特に確認したいのは、寝室からトイレまでの通り道です。夜間は明かりが弱く、目が覚めた直後で足元が安定しにくいこともあります。
床の物を一つ移動するだけでも、歩きやすくなる場合があります。ただし、何が入っているかわからない物は、親へ確認してから動かしましょう。
階段
階段では、上り下りするときに手がふさがらないことと、足元が見えることが大切です。
階段を一時的な物置にしている家庭では、新聞、洗濯物、小さな箱などが段の端に置かれていることがあります。
- 段の上に物が置かれていないか
- 手すりの上や近くに荷物がないか
- 照明が暗くなったり、電球が切れたりしていないか
- 敷物や滑り止めがずれていないか
- 階段の上り口と下り口に物がないか
- 両手に荷物を持って上り下りしていないか
親が階段をつらそうに使っている場合は、物を片づけるだけでは足りないこともあります。
寝る場所を1階へ移したり、生活する階をまとめたりする方法もありますが、親の体の状態や住宅のつくりによって適した方法は異なります。
親が今の寝室を気に入っている場合もあります。子どもの判断だけで移動を決めず、必要に応じて地域包括支援センターや福祉用具の専門職などへ相談しましょう。
浴室・脱衣所
浴室や脱衣所は床が濡れやすく、衣類を脱ぎ着するときや浴槽をまたぐときに、体勢を変える場所です。
- 脱衣所や浴室の床が滑りやすくないか
- マットがずれたり、端がめくれたりしていないか
- 床に洗面器や掃除用品が置かれていないか
- 浴槽をまたぐときにつかまれる場所があるか
- 脱衣所から浴室までの段差が見えやすいか
- 照明が暗くなっていないか
浴室用の手すりや滑り止め用品には、さまざまな種類があります。置くだけの商品でも、床や浴槽との相性によっては、ずれたり使いにくかったりすることがあります。
親の状態や浴室の構造によって合う物が異なるため、設置を考える場合は、福祉用具の専門職などへ相談すると安心です。
火災につながる場所を確認する


火災の確認では、火を使う台所だけでなく、暖房器具、電源コード、仏壇まわりも見ます。
毎日使っている物ほど、親も家族も危険に気づきにくいことがあります。「危ないからやめて」と決めつけず、「使いにくいところはない?」と聞きながら一緒に確認しましょう。
台所
台所では、コンロのまわりと床を優先します。調理器具が多くても、安全に使えている場合はあります。
物の数を減らすことより、火の近くに燃えやすい物がないか、操作しにくくなっていないかを見ることが大切です。
- コンロの近くに紙、布、ビニール袋がないか
- 調味料や調理器具が操作部分をふさいでいないか
- 使用後に火や電源を確認しやすいか
- 換気扇やコンロまわりに油汚れがたまっていないか
- 火災警報器に気になる点がないか
- 床に物があり、急いで動きにくくなっていないか
コンロまわりの物を動かすときは、親が普段どのように料理をしているかを聞きます。よく使う物を遠くへ移すと、無理に手を伸ばしたり、別の場所へ一時置きしたりすることがあります。
見た目を整えるだけでなく、安全と使いやすさの両方を考えましょう。
鍋を焦がした、火を消し忘れそうになったなどの変化がある場合は、火を使う回数を減らす方法や、安全機能のある機器も選択肢になります。ただし、親の使いやすさや費用を確認せずに交換を決める必要はありません。
暖房器具
ストーブやヒーターなどの暖房器具は、寒い季節の暮らしに欠かせません。一方で、衣類、新聞、カーテンなどが近くにあると、火災につながる可能性があります。
- 器具の近くに衣類、新聞、布団などがないか
- カーテンや家具との距離が近すぎないか
- 洗濯物を器具の上や近くで乾かしていないか
- 古い灯油や保管容器に気になる点がないか
- 電源コードやプラグが傷んでいないか
- 消したことを確認しやすい位置にあるか
古い暖房器具を使っていても、子どもの判断だけで処分しないようにします。親にとっては、冬を過ごすために必要な生活用品です。
「古いから危険」と決めつけるのではなく、使いにくさや不具合がないかを聞きます。気になる場合は、取扱説明書、販売店、メーカーなどで点検方法や買い替えの目安を確認しましょう。
電源コード・コンセント
電源コードや延長コードは、火災だけでなく転倒にも関わります。テレビまわり、寝室、台所、暖房器具の近くは、コードが増えやすい場所です。
- 延長コードへ多くの機器をつないでいないか
- プラグやコードに傷、変色、変形がないか
- 家具の下でコードが強く押されていないか
- コンセントやプラグにほこりがたまっていないか
- 通路をコードが横切っていないか
- 使っていない延長コードが差したままになっていないか
配線を変えるときは、どの機器につながっているかを確認してから行います。わからないまま抜くと、電話、見守り機器、冷蔵庫など、必要な機器が止まることがあります。
古い電源タップや配線に不安がある場合は、無理に分解せず、電気店や専門業者へ相談しましょう。
仏壇まわり
仏壇は、親にとって大切な祈りの場所です。ろうそくや線香を使う家庭では、周囲の紙類や布との距離を確認します。
- ろうそくや線香の近くに紙や布がないか
- 供物や飾りが倒れやすくなっていないか
- 火を使った後に消火を確認できているか
- 仏壇のまわりに新聞や箱が積まれていないか
- 電気式のろうそくや線香を無理なく使えるか
火を使わない用品へ替える方法もありますが、親の習慣や気持ちへの配慮が必要です。
「危ないからやめて」と言い切るのではなく、「今までどおりお参りしながら、火を使わない方法もあるみたいだよ」と、選択肢として伝えると話しやすくなります。
焦げた跡、異臭、プラグの変形、器具の異常な熱などが見つかった場合は、無理に使い続けず、販売店や電気の専門業者などへ確認してください。設備や器具の状態は、家族だけでは判断しにくいことがあります。
防犯に関わる場所を確認する


防犯では、鍵の状態だけでなく、電話への対応や郵便物の管理も確認します。
親が一人で暮らしている場合や、家族が遠方に住んでいる場合は、家の外から見える変化にも目を向けましょう。
玄関
玄関では、鍵を無理なく開け閉めできるかを確認します。鍵が古くて回しにくいと、施錠そのものを負担に感じることがあります。
- 玄関の鍵を無理なく開け閉めできるか
- 鍵を郵便受けや植木鉢の近くへ置いていないか
- 訪問者を確認せずに扉を開けていないか
- インターホンや呼び鈴が聞こえているか
- 玄関の外に長期間同じ荷物が置かれていないか
新しい防犯設備を取り入れる場合も、機能の多さより、親が毎日無理なく使えるかを考えます。複雑な操作が必要な物は、設置しても使われなくなることがあります。
鍵の交換や機器の設置を決める前に、親がどの操作に困っているのかを確認しましょう。
窓・勝手口
窓では、鍵のかけ忘れだけでなく、開け閉めのしやすさも見ます。家具や荷物で窓へ近づきにくくなっていると、施錠や換気そのものが負担になります。
- 窓や勝手口の鍵を無理なく扱えるか
- 鍵が壊れたり、ゆるんだりしていないか
- 窓の近くまで安全に歩けるか
- 外から室内の様子が見えすぎていないか
- 長期間閉めたままの雨戸やシャッターがないか
窓や鍵に不具合がある場合は、親と相談しながら修理を考えます。「鍵が少し固そうだけど、使いにくくない?」と聞くと、親が困っていることを確認しやすくなります。
固定電話・スマートフォン
電話は、家族との大切な連絡手段である一方、知らない相手からも連絡が入ります。
親が電話の内容を忘れたり、相手の話を断りにくかったりする様子がないか、責めずに聞いてみましょう。
- 知らない番号からの電話にすぐ出ていないか
- 電話で住所やお金の話をしていないか
- 家族や公的機関を名乗る電話が増えていないか
- 留守番電話や着信表示を使えるか
- 不審な電話があったときの相談先を知っているか
「知らない電話には出ないで」と強く言うだけでは、親が困ったときに相談しにくくなることがあります。
「迷う電話があったら、その場で返事をせず、一度こちらへ連絡してね」と伝え、相談しやすい関係をつくることも大切です。
電話機の機能を使う場合も、親が操作を覚えられるか、聞こえやすいかを確認します。対策が複雑すぎると、家族からの必要な電話まで取らなくなることがあります。
郵便物
郵便物は、親の暮らしの変化に気づく手がかりになります。郵便受けに手紙やチラシがたまると、長く留守にしているように見えたり、大切な通知を見落としたりすることがあります。
- 郵便受けに手紙やチラシがたまっていないか
- 不審な請求書や案内が届いていないか
- 大切な通知と広告が混ざっていないか
- 定期的に郵便受けを確認できているか
- 長く家を空けるときの対応を決めているか
親宛ての郵便物を、子どもが無断で開封するのは避けましょう。テーブルに未開封の物が増えている場合は、「大切な物が混ざっていないか、一緒に分けようか」と声をかけます。
不審な電話、訪問、請求などが気になる場合は、消費生活センターや警察の相談窓口などへつなぐ方法があります。窓口や対応は地域によって異なるため、親が住んでいる自治体の案内も確認してください。
チェック後は危険度の高い場所から整える
チェックが終わっても、一度にすべて直す必要はありません。最初は、危険度と使用頻度から優先順位を決めます。
- 最優先:火の近くにある燃えやすい物、傷んだコード
- 優先度が高い:夜間の通路、階段、滑りやすい浴室
- 次に確認する:玄関や窓の鍵、電話、郵便物
- 時間をかける:収納の中や生活へ直接影響しない物
親の持ち物を動かすときは、すぐに処分せず、「移動する」「使いやすい場所へ置く」「保留する」という選択肢を考えます。
子どもには危険に見えても、親には必要な物があります。反対に、親が慣れていて危険を感じていなくても、火の近くや夜間の通路など、そのままにしにくい場所もあります。
親の気持ちを尊重することと、安全上の問題を放置することは同じではありません。危険度が高い場所では、なぜ動かしたいのかを説明し、できるだけ親と一緒に置き場所を決めましょう。
自分で対応できる範囲も確認します。重い家具、電気配線、手すりの設置、鍵の修理などは、無理に家族だけで行わず、専門業者や地域の相談窓口へつなぐ方法があります。
親の家の安全確認は、一度行えば終わりではありません。親の体力、家電や設備、季節によって、危険になる場所は変わります。
次に実家へ行く日を決め、今回は玄関、次回は台所というように、無理なく確認を続けていきましょう。
まとめ:危険箇所は一つずつ小さく整える
親の家の危険箇所は、転倒、火災、防犯の3つに分けて確認します。
転倒では玄関、廊下、階段、浴室を見ます。火災では台所、暖房器具、コード類、仏壇まわりを確認します。防犯では玄関や窓の鍵だけでなく、電話への対応や郵便物のたまり方にも目を向けましょう。
チェックがついた場所を、一度にすべて直す必要はありません。親が毎日使う場所、夜間にも通る場所、火を使う場所から優先します。
親の家では、物の多さより先に、転倒、火災、防犯に関わる危険箇所を確認します。気になる物をすぐに捨てるのではなく、移動や使いやすい置き場所を親と相談しながら、小さく安全を整えましょう。
親の家に気になるところがあっても、これまでの暮らしを否定する必要はありません。まずは見た事実を兄弟や家族で共有します。
設備や親の体の状態について判断しにくい部分は、地域包括支援センター、福祉用具の専門職、電気店、鍵や住宅設備の専門業者などへ相談する方法もあります。
次に実家へ行ったときは、玄関の段差と、玄関から居間までの通り道だけを確認してみてください。気になる物があれば、すぐに捨てず、「ここから少し動かしてもいい?」と親へ聞くところから始めましょう。




