実家へ帰ったとき、玄関に靴が何足も出ていたり、上がり口の近くに荷物が置かれていたりすると、少し気になることがあります。
以前は簡単に越えていた段差の前で、親が一度立ち止まる。靴を履くときに、壁や靴箱へ手をついている。そんな様子を見て、「実家の玄関が危ないかもしれない」と感じる方もいるでしょう。
玄関は、外出や帰宅のたびに使う場所です。靴を脱ぐ、片足を上げる、体の向きを変える、段差を越えるといった動作が続くため、家の中でもバランスを崩しやすい場所です。
ただし、玄関に物が多いからといって、親の靴や荷物を一度に処分する必要はありません。最初に確認したいのは、親がいつもの動きで無理なく出入りできるかどうかです。
この記事では、高齢の親が転ばないために、実家の玄関で確認したい場所を整理します。靴、傘と荷物、段差、照明、体を支える場所を見直す方法と、親へ伝えやすい声かけも紹介します。
- 玄関で転倒が起きやすい理由
- 靴や傘が通り道をふさぐときの整え方
- 段差と暗さを確認するポイント
- 照明や手すりを見直すときの注意点
- 親に嫌がられにくい伝え方
玄関は転倒につながりやすい場所

玄関では、歩くだけでなく、靴を脱ぐ、かがむ、片足を上げる、段差を越えるといった動作が続きます。
若いころには気にならなかった動きでも、足腰の力や視力が変化すると、ふらつきやすくなることがあります。
さらに玄関は、屋外と室内の明るさに差が出やすい場所です。夕方や夜には足元が見えにくくなり、靴や小さな荷物へ気づきにくいこともあります。
実家の玄関を見るときは、物の数だけで判断しないことが大切です。親がどこへ足を置き、何につかまり、どのように靴を履いているかを確認してみましょう。
靴や傘が足を置く場所を狭くする
玄関には、普段履く靴だけでなく、季節外の靴、長靴、来客用のスリッパ、傘などが集まりやすくなります。
壁際へきれいに並べてあるように見えても、親が足を置く場所や、体の向きを変える場所を狭くしている場合があります。
特に確認したいのは、玄関の中央と上がり框のすぐ下です。段差を下りた場所に靴があると、最初の一歩を置く場所が限られます。
スリッパも、脱いだまま向きがばらばらになっていると、足へ引っかかることがあります。軽いスリッパは、ドアを開けた風や人の動きで位置が変わることもあるでしょう。
傘は、傘立てから斜めにはみ出していたり、濡れたまま床へ置かれていたりすると、通路をふさぎます。杖と傘を同じ場所へ入れている場合は、杖を取るときに傘が倒れないかも確認します。
親が靴をまたいで歩いている、傘立てや荷物を避けるために体を横へ向けているという様子があれば、まず足を置く場所を作ります。
- 上がり框の前に靴を置かない
- 普段履く靴を一足か二足だけ床へ出す
- 来客用スリッパは床ではなく収納へ入れる
- 傘が通路側へ倒れない位置へ移す
- 届いた荷物を玄関へ置いたままにしない
ここで大切なのは、使っていない靴をすぐに捨てることではありません。今履いている靴と、それ以外の靴を分けるだけでも、出入りする場所を確保できます。
段差と暗さが重なると動きにくくなる
日本の住宅では、玄関の土間と室内の間に上がり框があります。親にとって、この段差を上り下りする動きが負担になっていることがあります。
段差そのものに加え、段差の端が見えにくい、足を置く場所に物がある、体を支える場所がないといった条件が重なると、さらに出入りしにくくなります。
まずは、玄関の外から室内へ入り、親が普段動く順番をたどってみましょう。
- 段差の高さや端が見えやすいか
- 段差の手前と奥に靴や荷物がないか
- 靴を脱ぐときに体を支える場所があるか
- 照明のスイッチへ無理なく手が届くか
- 夕方や夜でも足元を確認できるか
- 玄関マットが滑ったり、めくれたりしていないか
昼間には十分明るく見えても、夜になると段差の境目がわかりにくくなることがあります。可能であれば、親が外出や帰宅をする時間に近い明るさで確認してみます。
玄関照明がつきにくい、電球が暗い、スイッチの前に荷物があるといった小さな不便も見つかるかもしれません。
「物が多いか」だけでなく、「足を置く場所があるか」「段差が見えるか」「体を支えられるか」の三つを確認します。見た目より、親の動きに合わせて考えることが大切です。
親が段差を上り下りしにくそうな場合や、ふらつきが気になる場合は、片づけだけで解決しようとしないことも大切です。
必要に応じて、主治医、地域包括支援センター、福祉用具の相談窓口などへ相談する方法があります。親の状態と玄関の構造によって、適した対策は異なります。
玄関で見直したい三つのポイント

玄関を整えるときは、靴、傘と荷物、照明と体を支える場所の順に見ると、作業を小さく分けられます。
一度にすべてを変える必要はありません。今日は靴だけ、次に行ったときは照明だけという進め方でも十分です。
普段履く靴を取り出しやすくする
最初に確認したいのは、玄関の床へ出ている靴の数です。靴箱へ入るかどうかではなく、親が出入りするときに足を置ける場所があるかを基準にします。
普段使う靴が一足か二足に決まっているなら、その靴だけを履きやすい向きにそろえます。それ以外の靴は、すぐに処分せず、靴箱や別の箱へ移しても構いません。
靴は、次のように分けると親も判断しやすくなります。
- 毎日または週に何度も履く靴
- 通院や冠婚葬祭などで使う靴
- 季節が変わったら使う靴
- 傷みがあり、今後履くか確認したい靴
- 今は判断できない靴
「これはもう履かないでしょう」と決めつけるより、「最近よく履くのはどれ?」と聞くほうが、今使っている靴を選びやすくなります。
靴箱の高い場所や低すぎる場所に普段履く靴があると、出し入れが負担になることがあります。親が無理なく手を伸ばせる高さへ置けるかも確認してみましょう。
置き場所を変えた後は、親と一緒に新しい場所を確認します。いつもの場所に靴がなく、探し物が増えないようにするためです。
傘と荷物を通路から外す
傘立ては玄関の隅にあっても、傘の持ち手や先端が通路へ出ていることがあります。
傘が多い場合は、普段使う物と、しばらく使っていない物を分けます。壊れた傘が見つかっても、親へ確認してから処分します。
玄関には、買い物袋、宅配便の箱、資源ごみ、飲料や米なども置かれやすくなります。「後で運ぶつもり」の荷物が、数日そのままになっていることもあるでしょう。
親が片づけられないのではなく、重くて運べない、収納場所まで遠い、中身を分けなければ持てないという可能性もあります。
責めずに、理由を聞いてみます。
- 「この箱、重くて運びにくかった?」
- 「中身を分けて、少しずつ運ぼうか?」
- 「玄関だと通りにくいから、置く場所を一緒に決めようか?」
真美玄関から移しても、別の通路に置いたら同じだよね。
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そうだね。動かす前に、どこなら安全に置けるかまで決めたほうがいいね
重い飲料や米は、小分けにすると親も扱いやすくなります。日用品のストックであれば、玄関から近い収納場所を決める方法もあります。
荷物を別の部屋へ移すときは、新しい通路をふさがないようにします。玄関から見えなくなれば終わりではなく、親が必要なときに安全に取り出せる場所へ置くことが大切です。
照明と体を支える場所を確認する
玄関の照明は、明るさだけでなく、親が無理なく点灯できるかを確認します。
スイッチの前に荷物がある、手を伸ばさないと届かない、帰宅したときに暗い中で探さなければならない状態になっていないでしょうか。
電球を交換するときは、親が感じている明るさも聞きます。子どもには明るく見えても、親には段差の境目が見えにくいことがあります。
人の動きを感知して点灯する照明などもありますが、玄関の構造や親の暮らし方に合うかを確認して選びましょう。
また、親が靴を履くとき、どこへ手をついているかを見てみます。靴箱や壁へ手をついているからといって、すぐに手すりが必要とは限りません。
親が困っているのは、段差を上がるときなのか、靴を履くときなのか、立ち上がるときなのかによって、必要な支え方は変わります。
手すりは、親の身長、利き手、体の動き、玄関の構造によって使いやすい位置が変わります。設置を考える場合は、必要に応じて福祉用具や住宅改修の専門職へ相談しましょう。
介護保険を利用した住宅改修には、工事前の相談や申請が必要になる場合があります。担当のケアマネジャーや地域包括支援センターなどへ、工事を始める前に確認してください。
親に嫌がられにくい伝え方


玄関の危なさが気になっても、「こんなに靴を出していたら危ないよ」と言うと、親は責められたように感じることがあります。
親にとって玄関は、長年同じやり方で使ってきた場所です。子どもから急に配置を変えられると、自分の暮らしを否定されたように感じることもあります。
話すときは、物の多さではなく、毎日の出入りを楽にすることへ目を向けます。
捨てる話より普段使う物を選ぶ
親に片づけを提案するときは、「何を捨てるか」から始めないほうが進めやすくなります。
まずは、普段使う物を取り出しやすくすることを提案します。
- 「よく履く靴を一番取りやすいところへ置こうか」
- 「段差の前だけ、足を置けるように空けてみない?」
- 「この傘は、ここへ置くと倒れにくそうだね」
- 「捨てなくていいから、使わない靴は箱へ移そうか」
- 「荷物の中身を分けたら、運びやすくなるかな」
このような言い方なら、親が大切にしている物を否定せず、玄関の使い方を見直せます。
親が「どれも使う」と言った場合も、無理に減らさなくて構いません。床へ出す靴だけを選び、残りは保留として収納する方法があります。
整えた後に親が使いにくそうなら、元へ戻すことも選択肢です。一度で正しい配置を決めようとせず、親の動きを見ながら調整します。
危険ではなく出入りのしやすさを伝える
玄関を整える目的は、見た目をきれいにすることではありません。親が外出しやすく、帰宅したときも無理なく家へ上がれるようにすることです。
「転ばないようにしよう」と言うと、親が老いを指摘されたように感じることがあります。その場合は、「靴を履きやすくしよう」「荷物を持っていても通りやすくしよう」と伝えてみます。
親が買い物から帰ったとき、どこへ荷物を置いているでしょうか。杖や傘は、どの手で取り出しているでしょうか。
実際の動きを一緒に確認すると、子どもだけで考えるより、親に合った置き場所が見つかりやすくなります。
親が片づけを嫌がる日は、無理に進めなくても構いません。「今日は普段履く靴だけ確認しよう」と範囲を小さくします。
それでも話が進まない場合は、一度引いて別の日に話してもよいでしょう。親子関係を保ちながら進めることも、実家整理の大切な一部です。
玄関を整えた後に確認すること
玄関の靴や荷物を動かした後は、見た目だけで終わらせず、親がいつものように出入りできるかを確認します。
子どもにはすっきりした配置でも、親にとって使いにくければ、長く続けることはできません。
親の動きをもう一度見る
整えた後に、親が靴を取り出し、履き、段差を上り下りする様子を見てみましょう。
- 普段履く靴を迷わず取り出せるか
- 上がり框の前に足を置けるか
- 傘や杖を無理なく取り出せるか
- 照明をすぐにつけられるか
- 移動した荷物を探していないか
使いにくそうなところがあれば、親の動きに合わせて置き場所を調整します。子どもが決めた配置を守ってもらうことが目的ではありません。
親が物を元の場所へ戻す場合もあります。「せっかく片づけたのに」と責める前に、なぜ元へ戻したのかを聞いてみましょう。取り出しにくかった、場所を覚えにくかったなど、配置を見直す理由があるかもしれません。
座って靴を履ける場所も考える
立ったまま片足になることが不安そうな場合は、座って靴を履ける場所があるかも確認します。
玄関用の椅子やベンチを置く方法もありますが、玄関の広さによっては、かえって通路を狭くすることがあります。
椅子を置く場合は、安定しているか、立ち上がるときに手をつけるか、玄関のドアや靴箱をふさがないかを確認します。
親の体の状態に合う高さや形がわからない場合は、福祉用具の専門職などへ相談する方法があります。
まとめ:玄関は足を置く場所から整える
実家の玄関が危ないと感じたときも、最初から靴や荷物をすべて処分する必要はありません。
まず確認したいのは、上がり框の前に足を置く場所があるか、靴や傘が通路をふさいでいないか、夕方や夜でも段差が見えるかという点です。
靴は、普段履く物を一足か二足だけ取り出しやすい場所へ置きます。それ以外はすぐに捨てず、靴箱や保留場所へ移す方法があります。
傘や荷物も、通路側へはみ出していないか確認しましょう。照明や手すりを見直す場合は、親の動きと玄関の構造に合わせることが大切です。
玄関では、物の数より、親が足を置けるか、段差を確認できるか、体を支えられるかを見ます。普段履く靴と必要な物を使いやすくし、処分を急がず、毎日の出入りが楽になる配置を親と一緒に考えましょう。
親へは「片づけよう」ではなく、「靴を履きやすくしよう」「毎日の出入りを楽にしよう」と伝えると、話を始めやすくなります。
玄関の靴を一足動かし、足を置ける場所を作るだけでも、毎日の出入りは変わります。一度に完成させず、親の動きを見ながら少しずつ調整していきましょう。
次に実家へ行ったときは、玄関の上がり框の前に立ち、親が足を置く場所を確認してみてください。物を捨てなくても、靴を一足横へ動かすだけで、実家整理の最初の一歩になります。









